しばらくは特定商取引に関する法律(以下、特定商取引法または特商法といいます)のお話です。
今回はこの法律のおおよその仕組みをご説明します。
特定商取引法とは?
世の中の取引の大半は契約です。そして契約は約束ですから、原則として一方的にキャンセルすることはで
きません。
しかし、例えば訪問販売のように不意打ち性の強い取引、消費者が商品・取引条件を対面で確認できない通
信販売など、消費者が不利益を被るおそれが大きい特定の取引については消費者保護の観点から、通常の
取引よりキャンセルがしやすくする内容を法律で定めました。その法律が特定商取引法です。
特定商取引の対象となる取引
おおよそ次のとおりです。詳細は今後の各回で説明します。
1 訪問販売 キャッチセールス・アポイントメント・セールスも含みます
2 電話勧誘販売 事業者が消費者に電話をかけさせた場合も含みます
3 通信販売 クーリング・オフ制度はありません
4 連鎖販売取引 ネットワークビジネス・マルチ商法などを指します
5 特定継続的役務提供 エステ・外国語教室などはこれにあたります
6 業務提供誘引販売契約 いわゆる「内職商法」です
7 訪問購入 いわゆる「押し買い」です
8 ネガティブ・オプション いわゆる「送り付け商法」です
クーリング・オフとは?
特定商取引法の最大の特徴はこのクーリング・オフかもしれません。
クーリング・オフとは一定の期間内であれば消費者が無条件撤回・解除できる権利です。
この一定の期間(以下、熟慮期間といいます)は訪問販売では「特商法で定めた書面を受け取ってから
8日」です。
連鎖販売取引・業務提供誘引販売契約では20日となっています。
熟慮期間を置く趣旨としては、訪問販売など不意打ち的・攻撃的な販売方法に対して、消費者が「頭を冷
やして」考え直す期間を与えるためと言われています。
この熟慮期間の開始の日がいつになるかは注意が必要です。
「契約の日」ではなく、「特商法で定めた書面」(以下、法定書面といいます)を受け取った日を初日としてカウ
ントします。
したがって、そもそも法定書面を受け取っていない、あるいは書面は受け取ったものの記載内容の不備が著
しく、実質的に法定書面とは言えない場合には熟慮期間がスタートしていないため、訪問販売の場合、契約
から8日を過ぎたケースでもクーリング・オフを認める判例が多数出ています。
以前、扱った事件では、契約から1年以上たった後に「法定書面の著しい記載不備」を理由としてクーリン
グ・オフを認めるよう裁判を起こした結果、裁判所はこの主張を認める判決を出しました。
またクーリング・オフ以外にも契約の取消ができる場合もあります。
契約後、時間がたっているからと言ってすぐ諦めずに、まずは専門家にご相談することをお勧めします。